(13)ネコ・猫パニック

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 すぐさま祥子(さちこ)が横合いから「お父さんだって私の前だと〝わし〟じゃないですか。ほら、現にさっきだって……」とクスクス笑うから、確かに……と思ってホッとする。  二人とも余所行きの一人称は〝私(わたし)〟らしいのだけれど、天莉(あまり)は父親が「わたし」と自称しているところをそんなに見かけたことがなかったので、(じん)に「貴方と話してるとき、お父さん、『わたし』だった?」と問いかけてみた。  父が「こら天莉っ」と娘をたしなめる声と、尽が「さてね」とお茶を濁す声とが重なって。  祥子が「まぁまぁ。ちょっと私たちが台所でお茶の準備をしてる間に男性陣ふたり、やけに仲良くなっちゃって」とコロコロと笑った。  その上で――。 「私も高嶺(たかみね)さんともっともっと仲良くなりたいと思っているのであえてお聞きしますね。高嶺さんは……うちの娘とは同期、ではありませんよね?」  と声の調子をがらりと変える。  天莉は、母が先程キッチンで話途中になっていたことを切り出しやすいように、場の空気を変えてくれたのを感じた。
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