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天莉の真意に気付いてくれた母・祥子が、すぐさま寿史の手に触れて父を制してくれて。
天莉は母親に〝有難う〟という気持ちを込めてコクッとうなずいた。
「だけどね、比べる度に気付かされるの。私が博視にどれだけ蔑ろにされていたか。じ、んが私のことをどれだけ大切にしてくれているか。尽は一番しんどい時に私のそばにいてくれて、支えてくれた。私、尽と一緒にいたら、味気なかったはずのご飯が美味しいって思えるの。……だからね、依存って言われたらそれまでかも知れないけれど。私、尽と一緒にいたい。彼のこと、もっともっと知っていきたい。それに、順番はアベコベかもしれないけれど、一日も早く博視よりも尽の方が何億倍も大好きだって……胸を張って言えるようになりたいの」
本当はもう、とっくの昔に天莉の中で尽は博視を越えている。
だけど――。
それを尽に気付かれたら駄目だと思って。
『偽装だと話したのに、本気で惚れるとか……キミは本当に重い女だね』などと思われたくない一心で、今はまだ、博視への気持ちの方が上なのだと、必死にアピールした天莉だ。
「――天莉。現状では元カレへの気持ちの方が、俺への気持ちより上ってことで合ってる?」
だから、尽が天莉の意図したところに気付いてそう問い掛けてくれた時、天莉は本心を押し殺して懸命にうなずいたのだ。
「そうか――」
だけど、尽がつぶやいたその声が、何故か心にズンと圧し掛かってくるように聞こえたのは気のせいだろうか?
思わず尽を見詰めた天莉に、だが次の瞬間、尽は信じられない行動に出て天莉を戸惑わせた。
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