(13)ネコ・猫パニック

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 天莉(あまり)の真意に気付いてくれた母・祥子(さちこ)が、すぐさま寿史(ひさし)の手に触れて父を制してくれて。  天莉は母親に〝有難う〟という気持ちを込めてコクッとうなずいた。 「だけどね、比べる度に気付かされるの。私が博視(ひろし)にどれだけ(ないがし)ろにされていたか。じ、んが私のことをどれだけ大切にしてくれているか。(じん)は一番しんどい時に私のそばにいてくれて、支えてくれた。私、尽と一緒にいたら、味気なかったはずのご飯が美味しいって思えるの。……だからね、依存って言われたらそれまでかも知れないけれど。私、尽と一緒にいたい。彼のこと、もっともっと知っていきたい。それに、順番はアベコベかもしれないけれど、一日も早く博視よりも尽の方が何億倍も大好きだって……胸を張って言えるようになりたいの」  本当はもう、とっくの昔に天莉の中で尽は博視を越えている。  だけど――。  それを尽に気付かれたら駄目だと思って。  『偽装だと話したのに、本気で惚れるとか……キミは本当に重い女だね』などと思われたくない一心で、今はまだ、博視(ひろし)への気持ちの方が上なのだと、必死にアピールした天莉だ。 「――天莉。現状では元カレへの気持ちの方が、俺への気持ちより上ってことで合ってる?」  だから、尽が天莉の意図したところに気付いてそう問い掛けてくれた時、天莉は本心を押し殺して懸命にうなずいたのだ。 「そうか――」  だけど、尽がつぶやいたその声が、何故か心にズンと()し掛かってくるように聞こえたのは気のせいだろうか?  思わず尽を見詰めた天莉に、だが次の瞬間、尽は信じられない行動に出て天莉を戸惑わせた。
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