(13)ネコ・猫パニック

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「だったら一個ずつ天城(あまぎ)んところにあげて、残り四つは食べたあと、二人でウォーキングとかしたらいいんじゃない?」  弟夫婦へお裾分(すそわ)けすればいいと言う天莉(あまり)の言葉に、二人が顔を見合わせて。  「それは名案ね」とつぶやいた祥子(さちこ)に、「食べたあとで、散歩がてら天城の所へ歩いて持って行くのも悪くないな」と寿史(ひさし)が同調する。 「そうすれば一石二鳥ね」  そんなことを話しながら笑い合う二人を見詰めて、天莉は自分も(じん)とこんな夫婦になれたらいいなと思って、自然と笑みがこぼれた。  そんな天莉の耳元へ、スッと身を(かが)ませた尽が「俺たちも食べた後、ね? 何せうちのは人にあげられる宛もないから。カロリーがヤバそうだ」と小声で吹き込んでくる。 「えっ?」  とつぶやいた天莉に、 「ほら。俺たちの方はお仕置きがてらで一石二鳥だ」  更に声を低めて(ささや)いて、ククッと楽し気な笑い声を残して身体を起こした尽に、天莉は思わず耳を押さえて長身の彼を睨み付けずにはいられない。  結局苦肉の策。「そうだっ。伊藤家に三つあげたらいいんじゃないかしら⁉︎」と持ち掛けた提案は、「俺がいつも世話になってる直樹(なお)にあげてないと思うかね?」という言葉で呆気なく封じられてしまった。  天莉は嬉しそうに自分を見下ろしてくる尽から視線を逸らしながら、(お仕置きって……一体何をなさるおつもりですかーっ!?)と、心の中で叫んだ。
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