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「天莉。キミは絶対勘違いをしているよね」
書類を手放すなり即座に踵を返して大股で戻ってきた尽にギュッと抱き締められた天莉は、頭上からそんな言葉を投げかけられた。
天莉は、尽がほんのり身に纏った甘やかな香水の香りを吸い込みながら「勘、……違い?」と尽の言葉をオウム返しする。
「ああ、勘違いだ。だが……どうやら俺は時々ひどく言葉が足りないらしくてね。――不安にさせたなら謝るよ。済まない」
実際問題尽は幼い頃から思い立ったら説明するより先に動いてしまうところがあって、直樹からもよく『説明してから動け』と叱られている。
「今のは……書類があったらキミを抱きしめる邪魔になりそうだったから先に避けさせてもらっただけなんだ。――せっかく二人で書いたのに、汚れても困るだろう?」
先ほどの行動をそう説明してから、尽は天莉の頭頂部にチュッとリップ音を響かせて口付けを落とした。
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