(15)初めてのマリアージュ

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「あの……でしたら、伊藤さんと(じん)は……いつぐらいから一緒にいらっしゃるんですか?」 (もしかしたら二人はかなり幼い頃から一緒にいて、伊藤さんが常務を兄のように甘やかしていたのかも?)  ふと思い立ってそんなことを尋ねた天莉(あまり)に、「ん? 直樹(なお)とは……赤ん坊の頃からずっと一緒に育ってきたけど……。それがどうかしたのかね?」と何でもないことのように尽がさらりと答える。 「えっ?」  それではまるで……。 「お二人はご兄弟なんですか?」  先ほど尽は一人っ子だと言っていたのに、ついそんな問いを投げ掛けてしまった天莉だ。 「ん? ――まさか。俺と直樹(なお)は赤の他人だよ?」  そこまで言って、天莉の疑問に思い当たったのだろう。 「あー。まぁ色々事情があってね。直樹(なお)のお父上がうちの実家に住み込みで働いてたんだ。その絡みで直樹(なお)とは兄弟みたいにひとつ屋根の下で一緒に育った。それだけのことだよ」  と、尽が付け加えてくれて。  それを聞いた天莉はますます訳が分からなくなった。  ただ、少なくとも天莉の実家とは違って、尽の生家は他所(よそ)の一家が住み込み出来てしまうほど大きなお屋敷だということは理解した天莉だ。 (薄々感じてたけど……尽って……ひょっとしてどこかのお金持ちの御曹司さんとかなんじゃ……)  だとしたら、天莉はとんでもない人のプロポーズを受けてしまったのかも知れない。  そう思ってオロオロと尽を見上げた天莉に、 「まぁその辺の話は俺の実家へ行くまでにおいおい説明するから。――今はとりあえずどら焼きを食う算段をしないか?」  尽があからさまに話題を変えたのが分かった。
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