(15)初めてのマリアージュ

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***  さあ〝ラム(くん)ドラ〟を食べようと言う段になって、(じん)がパントリーの奥の方から持ち出して来たのは何故か日本酒で。 「これは岐阜の方の古酒でね、三年もの。熟成感があって、甘いものにもよく合うよ」 「へっ?」  天莉(あまり)の中ではどら焼きと言えば日本茶。緑茶もいいけれど渋めのほうじ茶なんかを合わせても美味しいイメージ。  日本茶以外なら、紅茶や珈琲も有りだと思う。  だけど、まさか酒が出てくるなんて思わなかったし、そんな選択肢は(はな)からなかった。 「どら焼きに……お酒……?」 「ああ、結構合うぞ? あと、この酒は(かん)を付けるとまろみが出るとか何とか。――まぁ全部直樹(なお)の受け売りなんだがね」  誰かに教えてもらった知識だなんて、きっと言われなければ分からない。  黙っていてもいいことを、尽はさらりと直樹からの入れ知恵だと告白すると、少し照れたように笑った。 「はぅっ」  その笑顔にまたしてもキュンとして、思わず変な声が漏れてしまった天莉だ。 「天莉? ひょっとして……俺の知識じゃなくてガッカリした?」  途端不安げに眉根を寄せる尽に、天莉はふるふると首を横に振りながら、むしろそんなところがたまらなく大好きです!と叫びたい衝動に駆られる。  元カレの博視(ひろし)は知らないことも知っているかのように大風呂敷を広げて話すところがあるタイプだったので、一見プライドが高そうに見える尽の、こういう素直な一面がすごく(この)ましく思えてしまったのだ。
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