(15)初めてのマリアージュ

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「まぁこれも直樹(なお)の受け売りなんだがね」  ククッと笑う(じん)につられて、天莉(あまり)も思わず笑って。  箱から取り出したばかりのちろりへそのまま酒を注ごうとする尽を止めた天莉は、「一応洗ってから使いましょう?」と尽を流しへと(いざな)った。  新品のものを洗わずに使ってしまおうとする辺りが尽らしいなと思って。 (お仕事は出来る人なのに……生活力とか死ぬほど低めなのよね)  恐らくそう言うことをしなくても生きて行けるような環境で育ってきたんだろう。  天莉は、直樹が尽の世話を焼かずにはいられなかったのを、ひしひしと実感させられてしまう。  ただ、きっと直樹は天莉よりもずっとずっと過保護で、尽にあれこれ教えないまま全て自分が先んじて処理してしまっていたんだろう。  だけど天莉は……もしもに備えて尽自身にもある程度は自力でアレコレ出来るようになって欲しい。 「えっと……買ってきたばかりのものは流通の過程で何がついているか分かりません。一度洗ってから使った方が無難です」  言いながらスポンジを手渡したら、尽が「なるほど」と神妙な面持ちをしてうなずいた。 「スポンジを濡らしてそこの洗剤をちょっとだけ付けてムニムニッと握ると泡が立ちますので……全体をまんべんなくこすってから泡、綺麗に洗い流してください。私はその間にお湯を沸かします」  そこまでいちいち説明しなくてもいい気はしたけれど、念には念を入れてしまった天莉だ。 (私も大概過保護ってことよね)  その点においては、恐らく直樹のことを言えた義理ではない。
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