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抱きしめてくる尽の下腹部に熱い昂りを感じた天莉は、どうしたらいいのか分からなくなる。
五年もの間、横野博視と付き合っていたのだ。
もちろん、そういう経験がないわけではない。
けれど博視とはここ数年エッチな雰囲気にはならなかったし、ましてや博視が初カレだった天莉には、博視以外との男性経験はない。
そういう諸々を差し引いたり掛け合わせたり……。
頭の中で散々持ち得る限りの性の知識をこねくり回してみたけれど、いざ目の前にいる超絶ハンサムな〝尽と〟そう言うことをするんだと思ったら、天莉は妙に照れてしまった。
だいたい尽みたいな雲上人が、自分に覆い被さるところなんて想像がつかない。
(そもそも常務ってトイレ行くの⁉︎)
何と、天莉の中で尽の位置づけはそこからなのだ。
およそ生物として営むようなアレやコレやが皆目見当もつかない相手。
それが高嶺尽なわけで。
(この家にトイレがあるのは知ってるし……一緒にご飯食べたりしてるんだから絶対排泄だって人並みにしてるはずっていうのは分かってるのよ)
今日実家に帰省した際、高速のサービスエリアで天莉のためにトイレ休憩を取ってくれた時、きっと尽だってトイレへ行ったはずだ。
そう。理屈では理解しているのだ。
でも――。
タイミングが合わないのか、天莉がリビングや台所にいる時に、尽がトイレを使うところを見たことがなかったから。
(わ、私もっ。彼がいる時は行かないようにしてるけどっ)
博視みたいに、尽は天莉の前でオナラもゲップもしないから、基本男性の基準が博視ありきの天莉には尽のことが推し量れなくて戸惑ってしまう。
つい先ほどまでなどは勝手に、尽は服を脱いだら実は下半身が子供の頃に遊んだお人形さんみたいにツルンとして何もないのでは?とすら思っていた天莉だ。
ので――。
今、自分の太ももに押し付けられている尽の興奮の正体が天莉にはイマイチぴんときていない。
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