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「ん? 何故って……風呂に入るからに決まっているだろう? 何度同じことを言わせるの?」
――そ、そういう意味じゃないっ!
すぐさま反論しようとした天莉だったけれど、当然のように背中に回された尽の手に、スリップ越し。パチンとブラジャーのホックを外されて、抗議の言葉を発することも出来ないまま声にならない悲鳴を上げた。
緩んだ下着をすぐさま押さえたいのに、尽にきつく抱きしめられたままではそれもままならないではないか。
そればかりか……。
「ねぇ天莉、選んで? 俺が先に入って待っておくのがいい? それとも天莉が先に入って俺を待つ?」
「なっ!」
何の話ですか!?と聞きたいけれど、天莉の戸惑いなんて想定の範囲内なんだろう。
尽は天莉の様子などお構いなしで楽し気に続けるのだ。
「――ああ、もちろん。ここで二人裸になって、仲良く一緒に入ると言う第三の選択肢もあるよ? ――その場合は俺が天莉を抱き上げて洗い場まで運んであげるのも悪くないね」
要するに、どう転んでも〝一緒に入浴する〟以外の選択肢はないと言いたいらしい。
「あ、あのっ。じ、んく……あ、アナタがお風呂から出た後に私が入ると言う第四の選択肢は」
何気なく〝尽くん〟と呼び掛けようとして、それは尽の中のHなスイッチを押すトリガーになると学んだ天莉は、あえて〝あなた〟とぎこちなく呼び直して自分にとっての最適解を提示したのだけれど。
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