(16)私だけの呼び方*

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***  そこからはもう天莉(あまり)の抵抗なんてどこ吹く風。  (じん)は器用に天莉を生まれたままの姿に剥いてしまうと、自分は天莉と向き合った。 「ヤダっ、尽くっ、な、んでっ!?」 「だって天莉、俺が服を脱ぎ始めたら逃げようとか思ってただろ?」 「――っ!」  天莉の性格からしてきっとそうだろうな?と推測して動いたのだが、尽の指摘に見開かれた天莉の双眸(そうぼう)が、『何で分かったの!?』と語り掛けてくるようで、思わず笑ってしまった尽だ。 (可愛すぎだろ、天莉) 「俺はね、別にあとから一人で入り直してもいいんだ。だから――」  真っ裸の天莉をじっと見つめていたい気持ちはある。  だけどあんまり追い詰めたら可哀想だな?とも思って。  尽はいつも愛用している今治(いまばり)の肌触りの良いフェイスタオルを一枚天莉に手渡すと、にっこり微笑んだ。 「何もないのは気持ち的にしんどいだろう?」 (まぁ、タオルの一枚や二枚、その気になれば何とでも出来るしね)  などと心の中で思っていることはおくびにも出さず――。  天莉は、尽の手渡したフェイスタオルをまるで最後の(よすが)ででもあるかのように胸前で抱き締めると、(こぼ)れ落ちそうにたわわな胸を隠すみたいにぎゅっと押さえつけた。  その様が、今すぐ抱きしめたくなるほど可愛いと思ってしまった尽だ。
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