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長辺がおよそ八〇センチ足らずのタオルの端っこは、足の付け根下数センチの辺りまで天莉の身体を隠している。
その、見えそうで見えない感じと、天莉の泣きそうな小動物みたいな表情が、尽の加虐心に燃料を投下した。
そうして言うまでもないが、今の天莉、後ろはノーガード。
実際目の前の尽からは、懸命にタオルで身体を隠す天莉の滑らかな肩の曲線や双翼のような肩甲骨、キュッと可愛らしく持ち上がった、まろみを帯びたお尻に繋がるであろう綺麗にくびれた腰のラインまで、鏡越しにバッチリ見えていたりする。
だが、洗面化粧台に背中を向けている天莉はそのことに気付いていないらしい。
恥ずかしそうに視線をうつむけて、一生懸命尽と対面している前ばかりを隠そうとしているのが、基本いつもは完璧な天莉の抜けたところを露呈しているようで、尽には愛しくてたまらないのだ。
「――さぁ、行こうか」
尽は今すぐにでも虐めてしまいたくなる衝動を懸命に押し殺しながら天莉に呼び掛けると、スーツのジャケットだけ脱ぎ捨てて先の宣言通り否応なく天莉を横抱きに抱き上げる。
と、背中や膝裏に触れる尽の手の感触で背面が丸出しなことに、さしもの天莉も思い至ったらしい。
それでも懸命にタオルをずり落ちないよう両手で押さえるので一杯一杯らしく、真っ赤な顔をしながら「ヤダッ。尽くっ、私自分で歩けるっ」とかジタバタするのが、往生際が悪くていいなと思ってしまった尽だ。
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