(17)声を聴かせて?*

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「あ、あのっ、(じん)くんっ⁉︎」 「……二人で同時に洗い合えば時短にもなるし、一石二鳥だ」  なのに尽は天莉(あまり)の言葉を聞く気はないのだとばかりにどんどん話を進めてしまう。 「あー、けどそうなるとスポンジがひとつしかなくて足りないか。……まぁそこは素手で洗い合えばいいよね? 手洗いだって普段は手と手をこすり合わせるだけなんだから手で撫で回して綺麗にならないと言うことはないだろう」  尽のとんでもない言葉を聞きながら、天莉はいつも自分がスポンジを使わないで身体を洗っているだなんて言えなくて。 (だって! その方が肌に優しいってどこかのサイトに書いてあったんだもん!)  尽のマンションには最初からスポンジが用意してあって……尽はスポンジ派なのかな?と思いながらも天莉、スポンジはモコモコのきめ細かい泡を作り出すためだけに使わせてもらって、洗うの自体はこっそり素手派を貫いていた。  それを見透かされたのでは?とドキドキしてしまったのだけれど、どうやらそう言うわけではないらしい。  いや、それよりも!  お互いに素手で洗い合うって何ですか⁉︎と思ってしまった天莉だ。 「あ、あのっ」 「そういえば……前に直樹(なお)が素手で洗う方が肌には優しいって言ってたな。汚れなんてものは実際、そんなにゴシゴシこすらなくても結構綺麗に落ちるんだそうだよ。だから天莉。……心配はいらないからね?」  尽が、「きっとあれは璃杜(りと)と風呂に入るために学んだ知識に違いないよね」とかつぶやくのを横目に見ながら――。  天莉は(いや、問題はそこではないんです!)と口を挟めなくてパクパクする。 「おや天莉。コイの真似かね? ホント天莉はいきなり変なことをするし……それが妙に可愛いんだから性質(たち)が悪いね」  絶対確信犯ですよね⁉︎という含み笑いを漏らす尽に、天莉は心の中、『そのお言葉、そっくりそのまま尽くんにお返しします!』と唇を戦慄(わなな)かせた。 --------------------- この辺りの素手洗いなどの参考にしたサイトのことなどをエッセイ(https://estar.jp/novels/26049096/viewer?page=451)で書いています。 もし気になられましたら♥
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