(17)声を聴かせて?*

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 なのに(じん)はそのことには一切言及しないで涼しい顔のままなのだ。  それが、天莉(あまり)には何だか悔しくてたまらない。 「きっと天莉が敏感なだけだよ」 「んんっ」  耳朶(じだ)をほんの少し甘噛みされて「可愛い」と付け加えられた天莉は、唇を噛みしめて漏れ出そうになる嬌声(きょうせい)を懸命に押し殺した。 「さて、泡に包まれて見えなくなったし、タオル、もう要らないよね?」 「やっ、待って。……!」  タオルをグイッと手から奪われたから、思わず言わなくてもいいことを自己申告してしまった天莉だ。  遠ざかるタオルを絶望的な気持ちで鏡越しに目で追いながら、胸と下腹部を手で懸命に覆い隠したのだけれど。 「天莉。せっかくタオルをのけても手があったら洗うのに邪魔だよ?」  そんな言葉とともに、「……けど、そうだね。下のこと、すっかり忘れてたのは俺のミスだ。ごめんね、すぐに泡で隠してあげるから許して?」と、それはそれは非常にわざとらしく眉根を寄せた尽から、追加で手のひらに乗せたフワフワの泡で天莉の手ごと包み込むように下腹部に触れられたからたまらない。 「やぁっ」  別に自分の手が尽の大きな(たなごころ)に包み込まれただけ。  直に急所へ(さわ)られたわけではないのに、秘所がキュンと切なく(うず)いて、そのことが天莉には恥ずかしくて仕方がなかった。
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