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「あぁんっ、やっ、あああ」
「俺はね、天莉のそういう声がっ、聴きたくてたまらない、んだ、よっ」
「で、もっ」
「まだ言う気なのか、天莉。俺以外の男が言ったことなんてっ、……綺麗さっぱり忘れてしまえ」
今後、天莉に触れる男は、尽以外にありはしないのだから。
「ホ、ントに、……いい、のっ?」
「いいに……決まってる、だろ? 何故そんなに……確認する?」
こんな可愛い声を聴きたくないなんて愚かなこと、言えるわけがない。
何より、自分の手練手管で女性が感じてくれるとかご褒美でしかないし、『もっとして欲しい』とか『気持ちいい』なんて求められた日には、男冥利に尽きると言うもの。
それに、もし不快なことをした場合にだって、言ってもらえなければ気付けないかも知れないではないか。
(まぁ、相手の反応を見てれば大体分かるが……)
だが女性は男に気を遣って演技してくれる場合もある。
そうされるよりはいっそ、痛い時は痛い、気持ち良くない時は違うところに触れて欲しいと、素直に教えてもらえる方が有難いくらいだ。
でないと、ひとりよがりな男になってしまう。
「そんなの許したらっ、痛い……とか言っちゃう、かも知れない、の、に?」
「ああ、もちろん言っていいに決まってる。むしろ、痛いのに我慢するのとか、絶対になしだからね?」
尽がそう告げた途端、鏡の中、尽を見つめる天莉が、泣きそうな顔をするから。
尽はハッとさせられた。
(横野、天莉に痛い思いをさせておいて、声を上げた天莉に逆ギレでもしてたのか?)
それもきっと……しつこいぐらいに何度も何度も。
それこそ天莉が痛みを訴えるたび、再三に渡って男がすることに意見することは女性として恥ずかしいことだとでも言ったんだろう。
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