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左手薬指にキラリと光る、ダイヤと緑水晶(Prasiolite)があしらわれた指輪を見て、天莉は小さく吐息を落とした。
この指輪、実はプラチナの台座部分を横から見ると、猫の横顔としっぽが隠されている。
上から見る分には普通の婚約指輪にしか見えない細工なのだけれど、尽から造形の種明かしをされた天莉は、その愛らしさに思わず「可愛い」と心奪われて。ついうっかり受け取ってしまったのだ。
だが――。
後に鑑定書をぼんやり眺めていて、はまっている石が4C(重量・色・輝き・透明度)評価のかなり高い高額なダイヤモンドと、ある一定の鉱山でのみ産出される紫水晶を加熱処理することで得られる希少石の緑水晶だと知って、背筋にゾワリと鳥肌が立った。
当然一度受け取ってしまったものを、尽が返品させてくれるはずもなく――。
そればかりか、『天莉が受け取ってくれないなら意味がないし、別のものを用意し直そう』とか恐ろしいことを言い出したので、天莉は慌てて指にはめたのだ。
そんなこんなで、天莉は小金持ちだと尽が言った、彼のご両親の正体を知らされたら卒倒してしまうかも知れないと思っている。
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婚約指輪のデザインの参考にさせて頂いた指輪についてエッセイで書いています。
https://estar.jp/novels/26049096/viewer?page=476
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