(18)胸騒ぎ

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(変に頑張りすぎて、汚したりしたら大変だもんね)  そう思いはしたものの、だったら何をして過ごせば?と、先程の〝話し相手が見つからないかも知れない問題〟に直面して、天莉(あまり)は弱ってしまった。  その戸惑いを如実(にょじつ)に感じ取ったらしい(じん)が、「今日は俺の手があいたらすぐにでも――」と何かを言おうとして「まぁ、それは本当に時間が出来てからの方がいいか」と言葉を(にご)す。 「えっ、なに、なに? 尽くんの手があいたら……何があるの?」  天莉は尽が何を言おうとしたのか、気になって仕方がない。  なのに――。 「おいおい分かるから楽しみにしておいで? それはさておき……」  ――もう一度よく見せて?と話題を変えられて、尽の腕の中へ引き寄せられた天莉は、いつものことながら仕立てのよい尽のスーツからふわりと香る、(かす)かなコロンの芳香にうっとりと吐息を落とす。 「私、尽くんの香り、大好き……」  ポツンとそんな言葉を落とした天莉に、(じん)が「そうか」と嬉し気に微笑んで。  「だったら」と言って天莉から一旦離れてから、いつも自分が身に付けているブルガリの香水瓶を手に戻って来た。 「ちょっとだけ、ね?」  言って、尽が天莉のいる上空にシュッと瓶の中身を軽く一吹きするから。香り付きのミストがごく微量、天莉の全身に降り注いでくる。 「これでキミも、今日一日は俺と同じ匂いだ」  尽から艶っぽく微笑まれて、「マーキングしたよ」と言われたように感じた天莉は、何だか物凄く照れ臭くなってしまった。 「それと――」
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