(18)胸騒ぎ

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***  (じん)は会場まで一緒に行こうと言ってくれたけれど、天莉(あまり)はその誘いを丁重にお断りした。  何故なら尽が言う〝一緒に〟は尽が普段仕事で使っている運転手付きの高級車に同乗しないか?という誘いだったからだ。 「途中で直樹(なお)も拾うから、うまくいけば璃杜(りと)やふわりにも会えるよ?」  尽が畳み掛けるように告げたその言葉自体はとっても魅力的で。  いつも尽と直樹の会話に出てくる二人に会ってみたいな?と、一瞬グラリと気持ちが傾きそうになった天莉だ。  けれど、尽とこのまま順調にお付き合いを続けていければきっと……いずれ伊藤家の面々とも会えるはずだと思い直した。 「……まだ尽くんと私がお付き合いしてるのは秘密でしょう?」  尽のために用意された社用車から、高嶺(たかみね)常務付の秘書・伊藤直樹が降りてくるのは自然だけれど、ただの総務課平社員の天莉が一緒なのはどう考えても不自然だ。  そう言外に含めて尽を見詰めたら、小さく吐息を落とされた。 「俺は……今すぐにでもキミは俺の婚約者だと公言してもいいくらいなんだがね」  その言葉は正直すごく嬉しかったけれど、まだ天莉は尽の両親に付き合いを認めてもらっていない。  高嶺家(たかみねけ)の面々に挨拶を済ませて了承を得た後ならばまだしも、そんなフライングは良くない。  ふるふると首を横に振った天莉を、尽がたまらないみたいにギュッと抱き締めた。 「キミのそう言う筋を通す真面目なところ。きっと直樹(なお)から言わせると俺の暴走の歯止めになって(この)ましいって褒められるんだろうけど……俺としてはちょっと寂しいかな?」 「……尽くん」  確かに尽は割と激情型なところがある。
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