(19)天莉に近付く者たち

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*** 「えっ。先輩すごぉーい! 博視(ひろし)と別れてそんなに経ってないのにぃー、もぉー新しい男ゲットしたんですかぁ? 先輩ってば見かけによらず結構やり手だったんですねー!? それでぇ、その人ってどんな人なんですかぁ? ひょっとして博視より有望株だったりしますぅ?」  天莉(あまり)は、今日この会場には婚約者も来ることになっているので、その人から呼ばれたらそちらを優先させる旨を伝えたのだけれど。  直樹からの報告や(じん)の口振りからすると、風見(かざみ)課長の口から紗英(さえ)の実父である江根見(えねみ)部長までは、尽と天莉の関係が伝わっているとみて間違いないはずだ。  てっきり紗英(さえ)にも父親からそれとなくそんな話が伝わっているものだと思っていたのだけれど。 (この感じからすると、もしかして彼女は知らない?)  会場入りする前、マンションで尽がしきりに天莉のことを気にしていたのは事実だ。仕事の合間を縫うようにして、もしかしたら会いに来てくれるかも知れない。  そうなったら、何を差し置いても尽を優先するつもりの天莉だ。  仮に紗英と一緒にいるとしても、それだけは(あらかじ)め釘を刺しておく必要があった。  そうしてそれとは別、今の天莉のセリフには、紗英が事実を知っているか否かをカマかけする意味もあったのだ。  知っていたなら紗英のことだ。  何かしらポロリと『お相手は高嶺(たかみね)常務ですよね?』的な発言をすると思っていたのだけれど。  勝手な思い込みで尽との関係を知っているとばかり思っていた紗英から、相手はどんな人ですか?と聞かれた天莉は、答えに(きゅう)してしまう。
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