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「待って? じゃあ私が前に行くから」
「残念でしたぁ~。先輩がノロノロしてる間に着いちゃいましたぁ~」
紗英はニコッと微笑むと、天莉に大ぶりの皿を二枚手渡してくる。
「紗英ぇ~、転んだとき手が付けなかったら困るのでぇ、先輩が紗英のお料理も運んでくださいねっ?」
言うなり天莉の返事も待たずにどんどん皿の上に料理を乗っけてくる紗英に、天莉はたじたじだ。
(相変わらずこの子はっ)
この状態では天莉は自分の取りたいものを取ることが出来ないのだけれど、紗英は当然という感じで、両方の皿に彼女が食べたいものを積み上げていく。
「ねぇ、こんなに一気に取って、全部食べられるの?」
余りに大量の食べ物を皿へ盛ってくる紗英に、天莉は不安になって問い掛けたのだけれど。
「えー? 全部なんて食べられるわけないじゃないですかー。先輩どんだけ大食いなんですかぁ? 紗英は最初から残す気満々で取ってますよぅ? だってぇー、食べても食べなくても会費に差は出ないんですもーん。だったら好きなモノ全部取ってぇー、色んなのちょっとずつ食べてみたほうがお得じゃないですかぁー?」
天莉はそういう考え方が好きではなかったので、「食べ切れないの、分かってるならもう取るのはやめなさい」と先輩権限を発動したのだけれど。
「チェーッ。先輩のそぉーゆークソ真面目なところ、すっごく窮屈で紗英、嫌いですぅ。博視にフラれた理由もそういうところにあるんじゃないですかぁ?」
本当に紗英は口が減らない。
そんなこと、博視自身から散々言われて来たことだ。
今更紗英に指摘されるまでもない。
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