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「あー。やっぱり気付いちゃいましたぁ? そうなんですよぅ。だけどぉ、折角もらいましたしぃ……もったいないので先輩が飲んでくださぁい」
「えっ?」
さっき、料理に関して天莉がそういうことを指摘したら、細かいことを言うなと嫌味を言ってきたのに。
天莉が呆然と紗英を見詰めたら、さすがに自身の言動の矛盾に気付いたのだろう。
「先輩が言ったんじゃないですかぁ。手にしたものを残すのは良くないってぇ」
確かに言いはしたけれど。
天莉はそれほどお酒が強くないのだ。
尽からも、自分の目が届かない以上、今日は出来ればアルコールは摂らないで欲しいとお願いされていたから、ソフトドリンクでしのぐ予定だったのに。
「先輩、今日はぁーもしかしてパーティーなのに車を運転して来ちゃった系ですかぁ? もしそうならTPPでしたっけぇ? それがなってないですよぅ?」
ここで〝環太平洋経済連携協定〟はおかしいので、恐らく〝TPO(時間、場所、場面)〟と言いたいんだろう。
天莉が自家用車を所有していなくて、いつも公共の交通機関で通勤しているのを知っているくせに、わざと言っているとしか思えない。
「今日はさすがにタクシーで来てる、けど」
しぶしぶ答えたら「だったらぁ、妊娠中の紗英と違って何にも問題ないですねぇー? はい、どぉーぞ」
悪びれた様子もなくグラスを押し付けられた天莉は、仕方なくそれを口にしたのだけれど。
「美味しい……」
甘くて飲みやすいお酒は、思いのほか喉が渇いていたらしい天莉の身体にスーッと染み込んできた。
気が付けば、料理も口にしないまま、ひと口、ふた口と、全部飲み干してしまっていた天莉だ。
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