(20)罠にハメられた天莉

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 扉が閉まる音に、天莉(あまり)は小さく吐息を落とすと、自由にならない手でカバンの中に仕舞ったスマートフォンを探り当てて。 ((じん)くんに電話……)  そう思ったけれど、うまく画面を操作することがままならなくて、電話帳はおろか通話履歴さえ呼び出すことが出来なかった。  音声サポートに助けてもらおうにも声もマトモに出せない。  それに――。  尽は今日、沢山仕事を抱えていると言っていたのを思い出した天莉は、今電話を掛けて彼を心配させるのは良くない気がして、尽への連絡自体を躊躇(ためら)ってしまう。 (あ、でも伊藤さんなら……)  以前、尽から『もし万が一俺に連絡が取れないときは直樹(なお)に伝言を残して?』と言われていたのを思い出した天莉だ。  伊藤直樹は常に尽と行動を共にしている。  彼にSOSを出せば、いずれ確実に尽の耳にも届くはずだ。  でも――。  結局スマートフォンを操作しようと手にした途端、手指にうまく力が入れられなくて、命綱の端末を床に落としてしまった天莉だ。 (あ……)  慌てて手を伸ばそうとしたのだけれど、身体が思うように動かなくて、気持ちばかりが焦ってしまう。
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