(20)罠にハメられた天莉

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 そうして、(じん)にプレゼントしてもらったワンピースへ手を掛けられた天莉(あまり)は、動けないなりに必死で抵抗したのだけれど。  当然声すらマトモに出せないような天莉に出来ることはほとんどないまま、コロンと身体をひっくり返されてうつ伏せにされてしまう。  背面には首筋からお尻まで一直線に伸びたファスナーがあるから、恐らくそれを下ろそうとしての行動だろう。 「着てるもの破るのもビジュアル的にはありなんだけどね、やっぱ余りに酷い格好にしたら悪目立ちしちゃうじゃん? 今からすることは俺たちだけの秘密だし、ここはやっぱ綺麗に脱がしてやんねぇと駄目だよな?」  見るからに襲われたことがバレバレの状態にしてしまったら、(おど)せなくなると考えたらしい。  尽からもらった大切なワンピースを引き裂かれたりすることはないと分かったけれど、それでも服をはぎ取られようとしていることに変わりはないのだ。  博視(ひろし)にだって良い抱かれ方はしてこなかった天莉だけれど、もちろんこんな風に無理矢理どうこうされたわけではない。  痛かったし好きになれない行為だったけれど、曲がりなりにも博視はそのとき天莉の彼氏だったから、全て合意の上でのことだった。  でもいま自分を手籠(てご)めにしようとしている男たちは違う。  尽とだって最後の一線は越えていないと言うのに、こんな訳の分からない相手にどうこうされるのは絶対に嫌だと思って。  なのにどうしてこんなに身体が自由に出来ないんだろう! 「ゃ……め、て」  拒絶の言葉すらはっきりと紡げない恐怖と悔しさに、天莉の瞳にぶわりと涙が盛り上がって頬を伝った。
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