(20)罠にハメられた天莉

11/16
前へ
/482ページ
次へ
「あー、髪の毛すっげぇ邪魔」  肩口を少し超えた天莉(あまり)の髪は、今日はハーフアップにしてある。  ひとつにまとめていない髪が、ファスナーの上に掛かってザキの邪魔をしているらしい。  乱暴に髪の毛を掴み上げられる感触に、恐怖心が最高潮に達して。 [(じん)くんっ、お願い、助けてっ!]  直樹にすらSOSを出せていないのに、尽が自分のピンチを察してくれるとは思えない。  ましてや今日、尽はとても忙しくしている予定で。  もし仮に、会場に天莉の姿が見えないことに気付いたとしても、すぐに探しに来ることは出来ないはずだ。  そんなことは分かっているのに、天莉はどうしても尽に助けて欲しいと懇願(こんがん)してしまう。  ポロポロと涙を(こぼ)す天莉に、背後の男たちは逆に興奮を覚えたらしい。 「嫌がる女の子を無理矢理襲うの、ダメって男も結構いるんだろうけどさ。俺は彼女とかには出来ねぇことが出来んの、すげぇ興奮するんだ。――玉木さん、だっけ? 襲い掛かったのが俺みたいな最低な男でごめんね?」  ザキがわざとらしく天莉の耳元に唇を寄せてククッと笑うから、天莉は気持ち悪くて堪らなくて。  なのに何の抵抗も出来ないのが本当に心許(こころもと)なくて怖い。 「あとね、さっきオッキーと話してたんで大体分かったと思うけど……一応教えといてあげるね? 俺さぁ普通にセックスするのあんま好きじゃねぇの。――玉木さんはケツの穴って使ったことある?」  布地越し。  そろりとお尻の膨らみを撫でられた天莉は、全身に鳥肌が立つのを感じた。 「こら、ザキ、あんまり玉木さんを怖がらせるなよ。すっげぇ泣いてるぞ?」  言葉とは裏腹。自身も物凄く楽し気に天莉の泣き顔にスマートフォン搭載のカメラレンズを寄せると、沖村が天莉の頬を伝う涙を指の腹で(ぬぐ)う。  それすら、天莉には不快でたまらないのだ。
/482ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6535人が本棚に入れています
本棚に追加