6535人が本棚に入れています
本棚に追加
「あー、髪の毛すっげぇ邪魔」
肩口を少し超えた天莉の髪は、今日はハーフアップにしてある。
ひとつにまとめていない髪が、ファスナーの上に掛かってザキの邪魔をしているらしい。
乱暴に髪の毛を掴み上げられる感触に、恐怖心が最高潮に達して。
[尽くんっ、お願い、助けてっ!]
直樹にすらSOSを出せていないのに、尽が自分のピンチを察してくれるとは思えない。
ましてや今日、尽はとても忙しくしている予定で。
もし仮に、会場に天莉の姿が見えないことに気付いたとしても、すぐに探しに来ることは出来ないはずだ。
そんなことは分かっているのに、天莉はどうしても尽に助けて欲しいと懇願してしまう。
ポロポロと涙を零す天莉に、背後の男たちは逆に興奮を覚えたらしい。
「嫌がる女の子を無理矢理襲うの、ダメって男も結構いるんだろうけどさ。俺は彼女とかには出来ねぇことが出来んの、すげぇ興奮するんだ。――玉木さん、だっけ? 襲い掛かったのが俺みたいな最低な男でごめんね?」
ザキがわざとらしく天莉の耳元に唇を寄せてククッと笑うから、天莉は気持ち悪くて堪らなくて。
なのに何の抵抗も出来ないのが本当に心許なくて怖い。
「あとね、さっきオッキーと話してたんで大体分かったと思うけど……一応教えといてあげるね? 俺さぁ普通にセックスするのあんま好きじゃねぇの。――玉木さんはケツの穴って使ったことある?」
布地越し。
そろりとお尻の膨らみを撫でられた天莉は、全身に鳥肌が立つのを感じた。
「こら、ザキ、あんまり玉木さんを怖がらせるなよ。すっげぇ泣いてるぞ?」
言葉とは裏腹。自身も物凄く楽し気に天莉の泣き顔にスマートフォン搭載のカメラレンズを寄せると、沖村が天莉の頬を伝う涙を指の腹で拭う。
それすら、天莉には不快でたまらないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!