(20)罠にハメられた天莉

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「じ、ン……く、……っ」  まともに出ない声で一生懸命恋人(じん)の名を呼ぶ天莉(あまり)に、「くくっ。声もちゃんと出せないとか……ホント怖いよねぇ?」と、カメラ越し、沖村がいやらしい笑みを浮かべて問いかけてくる。 「ねぇ、玉木さん。キミはいま、身をもって実感してると思うけど……その薬、すっげぇ効くでしょ? それさぁ、実はしてるさんが作った薬なんだわ。若いのに恐ろしいモン作ると思わない? 俺ねぇ、しでかしてっけど、ホントはあの人のこと、めちゃくちゃ尊敬してるんだ」 「ぶはっ。オッキー、お前、それ、尊敬してる人間にすることかよ」 「まぁなー。好き過ぎて壊したい、みたいな感じ? ザキなら分かんだろ?」 「まぁなー」  含み笑いを浮かべたザキに、ファスナーを下げられる感触が背中を伝う。  だけど、天莉はいま沖村が告げた言葉に(とら)われていて、そのほかのことが全て停止してしまっていた。  だって、『株式会社ミライ』には、常務はひとりだけしかいないのだ……。  そうして、それは天莉が良く知っている人物――高嶺(たかみね)(じん)に他ならない。 (どういう……こと? いま私を苦しめているのは尽くんが作った、薬……なの?) (うちから出向って……尽くんは……元々『アスマモル薬品』の人ってこと?)  身動きが出来ない状態で服を脱がされながら、大量の情報が一気に押し寄せてきて、天莉には処理しきれない。  涙が一瞬で止まってしまうくらい、沖村から告げられた言葉は天莉にとって衝撃的で。  肩に手を掛けられて、ワンピースを割り開くように腕から抜き取られそうになるまで、天莉は現状から束の間意識を切り離されていた。
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