6535人が本棚に入れています
本棚に追加
「じ、ン……く、……っ」
まともに出ない声で一生懸命恋人の名を呼ぶ天莉に、「くくっ。声もちゃんと出せないとか……ホント怖いよねぇ?」と、カメラ越し、沖村がいやらしい笑みを浮かべて問いかけてくる。
「ねぇ、玉木さん。キミはいま、身をもって実感してると思うけど……その薬、すっげぇ効くでしょ? それさぁ、実はうちから出向してるお宅の常務さんが作った薬なんだわ。若いのに恐ろしいモン作ると思わない? 俺ねぇ、こんなことしでかしてっけど、ホントはあの人のこと、めちゃくちゃ尊敬してるんだ」
「ぶはっ。オッキー、お前、それ、尊敬してる人間にすることかよ」
「まぁなー。好き過ぎて壊したい、みたいな感じ? ザキなら分かんだろ?」
「まぁなー」
含み笑いを浮かべたザキに、ファスナーを下げられる感触が背中を伝う。
だけど、天莉はいま沖村が告げた言葉に囚われていて、そのほかのことが全て停止してしまっていた。
だって、『株式会社ミライ』には、常務はひとりだけしかいないのだ……。
そうして、それは天莉が良く知っている人物――高嶺尽に他ならない。
(どういう……こと? いま私を苦しめているのは尽くんが作った、薬……なの?)
(うちから出向って……尽くんは……元々『アスマモル薬品』の人ってこと?)
身動きが出来ない状態で服を脱がされながら、大量の情報が一気に押し寄せてきて、天莉には処理しきれない。
涙が一瞬で止まってしまうくらい、沖村から告げられた言葉は天莉にとって衝撃的で。
肩に手を掛けられて、ワンピースを割り開くように腕から抜き取られそうになるまで、天莉は現状から束の間意識を切り離されていた。
最初のコメントを投稿しよう!