(21)解毒*

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***  (じん)が来てくれて、彼の腕の中に包まれて、天莉(あまり)はホッと胸を撫でおろした。  それと同時、身体の中にこもったままの熱が、尽の温もりを求めてキュンと(うず)いて……。  天莉は、今はそれどころじゃないのに!と身のうちで(くすぶ)る情欲に戸惑いを覚えずにはいられない。  恐らく、これも飲まされた薬の影響に違いないのだけれど。  そんなものに支配されて尽を求めてしまうとか、自分はなんて(みだ)らな人間なんだろうと思った。  そもそも、つい今しがたやっと、貞操の危機を回避したばかりだと言うのに。  頭の中ではまたこんなことが起こる前に、愛しい(かれ)に全てを奪い去って欲しいと思ってしまっている。  こんな思考回路、どうかしているとしか思えないではないか。  そう気が付くと、今、尽に抱き上げられていること自体、とてもイケナイことに思えてきてしまった。  もっと悲惨な状態にされた後でなくて良かったと思うのと同じくらい、尽以外の男の手で好き勝手されてしまったことが情けなくて仕方がなくて……泣きたくなった。  もう一度最初からやり直すみたいに、尽が優しく脱がしてくれたなら、このモヤモヤした気持ちは払拭(ふっしょく)出来るだろうか。 (いっそ、そうして欲しい)  今、着ている服を一刻も早く嫌な記憶とともに脱ぎ捨ててしまいたい。  そこまで考えて、天莉はハッとした。 (ダメ、私、変なことばかり考えちゃってる……)  せめて重石(おもし)のように乗っかっていた風見(かざみ)が排除されたとき、すぐにでもこの劣情にフタをするように、自分で身づくろいを出来たら良かったのだけれど、それすら出来ないことが情けなくて。  尽が、そんな天莉に何も言わずに自らの上着を着せかけてくれたことで、彼も天莉の現状をどうにかしないといけないと思ったんだよね、と容易に推察できてしまったから。  余計に何も出来ない自分が、消え去ってしまいたいほど恥ずかしかった。  尽には一度裸を見られているけれど、あの時とは違って、今回は触れられたくもない男達によってこんな格好にされてしまっているのだ。  そのことが、ただひたすらに情けなくて恥ずべきことに思えて。
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