(21)解毒*

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 確かに今、身体中が(じん)の温もりを求めて(うず)いている。  その欲求を満たしてやれば、この熱も(やわ)らぐはずだと言われたら、確かにそうなのかも知れないと思えたし、正直尽以外の男たちに襲われかけて、こんなことならば尽に抱かれておけば良かったと激しく後悔だってした。  でも――。  いざ解毒のためだけにそんなことをすると言われたら、何だか尻込みしてしまう。  尽は沖村とザキの会話を聞いていたわけではないから、まさか後ろを触らせろとは言わないと思うけれど、天莉(あまり)はそこも含めて物凄く不安になってしまった。 「あ、の……じ、んく……ン、……」 「ん?」 〝後ろも……触るの?〟  尽は、天莉を襲おうとしていた者たちがしようとしていたことをすると言った。  もしもこの何とも厄介な薬効を打ち消すために、そんな行為も必要になるだなんて言われたら、天莉は絶対に(ひる)んでしまう。  元々性行為に関していい思い出がほとんどないのだ。  普通にしても上手く出来るか不安なのに、そんなアブノーマルなことまでしないといけないとしたら。 (ヤダ、怖い……)  その必要はないと尽に否定してもらって安心するためにも、ハッキリ言葉にして聞いてみたいのに、そんなことを口にしようものなら、天莉が尽以外の男性たちからどんな扱いを受けそうになったのかを露呈させてしまうだろう。  それは、尽を物凄く傷つけてしまう気がして結局言えなかった天莉だ。  散々迷った挙句、(尽くんのことを信じるしかないよね?)と自分に言い聞かせながら、そっとまぶたを閉じることしか出来なくて。
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