(22)紗英の身勝手な言い分

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(先輩が手に入らなかったからって紗英(さえ)に手を出してくるっていうのもムカついたのよね! 若さも可愛さも断然紗英の方が上なのに! 紗英を先輩ごときの代わりにしようとすること自体、本ッ当(ほんっと)女を見る目がない男!)  だからその腹いせに玉木(たまき)天莉(あまり)から恋人を奪ってやろうと思い付いたのだ。  風見(かざみ)斗利彦(とりひこ)が落とせなかった貞操の硬い女の、男を寝取る。  最高に面白いゲームだと思った。 (博視(ひろし)、めっちゃチョロかったけど……先輩を捨てて紗英を選んだだけ、風見より何億倍もマシ!)  博視を(そそのか)して、玉木の誕生日に長年付き合ってきた彼女をフラせた。  如何にもプロポーズかも?みたいに思わせるため、ハイエンドホテルで待ち合わせさせて、目の前で博視はもう先輩のものじゃないんですよぅ?と見せつけてやった時の快感!  風見への鬱憤(うっぷん)もまとめて晴らせた気がして、最高に気分が良かった。  なのに――。 (パパのバカ!)  紗英は別に博視なんかと結婚したいわけじゃなかったのに。  きっとあちこちで男を食い散らかして派手に遊び過ぎたのがいけなかったのだ。  なかなか地に足の付かない娘を心配したらしい江根見則夫(ちちおや)が、自分の部下にあたる横野博視を脅して紗英(一人娘)と結婚するようけし掛けていたと知ったのは、則夫から博視と結婚するよう通告された後だった。  赤ちゃんなんて出来ていないのに、先輩をどん底に突き落とすためお芝居で博視に告げた嘘も、何故か父親の耳に入っていて。  何だか今更妊娠なんかしていないと言えない状況に追い込まれていた。
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