(22)紗英の身勝手な言い分

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 ニヤリと下卑(げび)た笑みを浮かべた風見(かざみ)に、「だったら噓がバレて困らないよう私が子種を授けてやろうな」って、結局そのまま中に出されてしまった。  一応婚約者ということになっている博視(ひろし)にだって、天莉(あまり)から奪い取るまでの数回しか中で、は許していなかった紗英(さえ)としては、正に最悪の極み。 (ピルは気分悪くなるから飲むのやめてるのにぃ! 赤ちゃん、本当に出来ちゃったりしたらパパに言い付けるって脅して手術代+慰謝料、きっちり請求してやるんだからぁ! 覚えてなさい!)  そこまで考えて、(あ、でもそうだ)と思い至った紗英だ。  この辺で一度産婦人科に行って「子供はやっぱり駄目でしたぁ……」という実績作りのための伏線を張っておいた方がいい。 (明日はお仕事休んでぇー、アフターピルを処方してもらっちゃおーっと)  何せ紗英、博視とは赤ちゃんを失って申し訳なくて、一緒にいるのが辛くなったと言う理由で婚約破棄をする計画なのだ。 (あんな独りよがりのエッチしか出来ない下手くそ男の妻になるのなんてぇ、願い下げだもん!)  博視と別れた後は、子供を失った上に婚約者も同時に()くしてしまった可哀想な女の子を演じつつ、常務の高嶺(たかみね)(じん)か、彼の秘書の伊藤直樹に傷心の自分を慰めて欲しいという(てい)で猛アタックをして、どちらかをゲットするという壮大な計画がある。  実は紗英、性格は最悪で貞操観念もゆるゆるな困った女性だが、容姿だけは守ってあげないといけないようなどこか幼さの残った顔立ちで、ちょっと小首を傾げてウルウルッと瞳を潤ませれば、落とせなかった異性はいないという自負がある。
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