(22)紗英の身勝手な言い分

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 だがまぁ、どうせ明日には緊急避妊薬をもらうつもりだ。  そんなことよりも、帰ったら風見(かざみ)見がもったい付けて教えてくれなかったことを父親に色々聞いてみなくてはいけない。 (何で紗英(さえ)の課のことに高嶺(たかみね)(じん)が口出しして来てるのぉ? 何でパパは紗英が沢山仕事押し付けられてるのに助けてくれないのぉ? 紗英が可愛くないのぉ~?)  って。  他の男たち同様、紗英が瞳を潤ませて頼みさえすれば、父親だってイチコロだ。  きっと、いくら自分より立場が上の常務からの命令でも、何とか風見に命令して、また天莉(あまり)に紗英の仕事を押し付けられるよう手配してくれるだろう。  フラれアラサー余り物女な玉木(たまき)天莉(あまり)には、紗英みたいな後ろ(だて)なんてないのだから。 (さっさとまた、私の仕事をこなすコマになってよね、せぇーんぱいっ♥)  高嶺尽が紗英の課のことを気にしたのだってきっと気まぐれだ。  もうほとぼりも冷めている頃だろう。  紗英は軽い気持ちでそう思っていたのだが――。 *** (何で先輩なんかが高嶺(たかみね)常務と婚約してるの!? 博視(ひろし)はキープに過ぎなかったってこと!? 何て(したたか)かでいやらしい女なの! ムカつくぅー!)  帰宅して父親に色々問い詰めたらそんな話を聞かされて、怒りの余り頭が大渋滞を起こしてしまった紗英(さえ)だ。
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