(22)紗英の身勝手な言い分

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 父・則夫(のりお)は、裏でコソコソやっているの絡みで、目の上のタンコブ的存在の高嶺(たかみね)(じん)を、何とかして自分の支配下に置きたいらしい。 「それでな、紗英(さえ)。お前にも一肌脱いでもらいたいんだが」  紗英にはよく分からなかったけれど、玉木(たまき)天莉(あまり)(おとしい)れることで、ゆくゆくは高嶺(たかみね)(じん)を操れるようになるらしい。  則夫の話では、身体の自由を奪う薬入りの酒を天莉に飲ませて、調子が悪くなった天莉を休ませる(てい)で、則夫があらかじめ押さえておいた部屋へ連れて行って休ませるのが紗英の仕事。 「一人じゃ運ぶのがきついと思ったら、横野をうまく使うんだ」  則夫の言葉に、紗英はコクッと(うなず)いた。  天莉と面識があって、頼られると嫌と言えない天莉の性格を熟知している紗英ならば簡単な仕事だ。 (パパ、うまく出来たらお小遣いたくさんくれるって言ってくれたしぃ~。それに……)  何を思ったのか、則夫は「高嶺(たかみね)をわしの配下に出来たら、紗英の婿は高嶺にすげ替えてやってもいいぞ?」と言ってくれた。  則夫がどんなにバックアップしても、元の能力がそこそこの博視では大きく飛躍することは出来ないが、高嶺尽ならば放っておいても自力でどんどん高みへ昇っていけるからな?と言われたら、紗英にも妙に納得出来た。  紗英は知らなかったけれど、高嶺尽は容姿や才覚だけでなく、出自もかなりいい、いわゆるお坊ちゃまらしい。
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