(22)紗英の身勝手な言い分

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 でも風見(かざみ)ともう一度するのは嫌だったので、『今度の機会にぃ~』と如何にもような思わせぶりなセリフを残して、その薬を風見にキープさせておいた。  数か月前、風見がまた父・則夫(のりお)から例の仕事を頼まれたと聞いたとき、紗英(さえ)もその会場へ出向いて父親が押さえていた部屋とは別の部屋を取って、そこで風見が隠し持っていた薬を飲んでみることにしたのだ。 『風見(かざみ)はぁ~、ターゲットの女の子を好きなように可愛がってあげたらいいじゃん? 紗英だとぉ、やっぱりパパへの遠慮があって切れないでしょぉ~? 代わりに紗英の方へを回してくれなぁい?』  紗英がそう提案したら、一瞬驚いた顔をした風見だったけれど、次の瞬間にはニタァーッと気持ちの悪い笑みを浮かべて。  紗英に液体入りの小瓶(こびん)を渡して「契約成立だ」と耳打ちしてきた。  要するに利害の一致。  風見と手を組んで、父親の目を盗んでイケナイ遊びをした紗英だ。 (だってぇ~、何だかよく分からないを受けるっていう男の人たちぃ~、二人ともアスマモル薬品の社員さんだって言うんだもぉ~ん。上手くすればミライ(うち)でお婿さん候補見つけるよりエリートだよぉ?)  元々淫乱で感じやすいタイプの紗英だったけれど、あの薬を使った時の高揚感は異常で。  どこに触れられても電気が走ったみたいに気持ちよくてたまらなかった。  そのうえ身体の自由がきかなくなることや、うまくしゃべれなくなることなんて今まで経験したことがなかったから、その不自由さに物凄く興奮したのを覚えている。  紗英を抱いてくれた男たちの一人――ザキと名乗っていた――がまた、特殊性癖な変態だったのも、紗英には最高過ぎて。  お尻でも気持ちよくなれるだなんて、紗英は初めて知った。
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