(23)許してやるつもりなんてない

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***  (じん)が自分の執務室へたどり着くと、直樹が一組の男女を連れて来ていて。 「何で……あなたたちがここに……いる、の……よぅ」  江根見(えねみ)紗英(さえ)がその二人を見て呆然と立ち尽くしていた。 「浅田先生がどうしても江根見紗英さんに直接伝えたいことがあるとおっしゃったので、お連れしたまでです」  紗英の質問に律儀に答える直樹へ、尽が「手配してもらった例の方は?」と問うと、「秘書室(となり)で待機して頂いています」と返る。  秘書室は(じん)たちの持つ取締役室と直接行き来できるよう中扉で繋がっている。  そこへ通してあると言うのなら、折を見て執務室(こちら)へ入って来てもらうのに、都合がよい。  尽は小さくうなずくと、「とりあえずどうぞ」と執務室の入り口を開けて皆を中へ(うなが)した。  尽としては今すぐにでも一連の悪事のリーダーとも言える江根見(えねみ)則夫(のりお)を断罪したいところだったのだが、浅田夫妻――というか、泣きそうな顔をした旦那を従えた奥方のほう――が、今から江根見紗英に突き付けるであろうことも、恐らく則夫に少なからぬダメージを与えるはずだと考えて。  今まで散々天莉(あまり)を苦しめてきた一番の害悪が誰かを考えた時、どう考えても紗英だという思いが捨てきれなかったと言うのもある。  そこを完膚(かんぷ)なきまでに叩いておくのも悪くないと思ったのだ。
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