(23)許してやるつもりなんてない

13/18
前へ
/482ページ
次へ
 離れていても、鼻を突く紗英(さえ)の香水の香りには正直辟易(へきえき)させられる。    執務室に彼らを入れた後は、しばらく換気が必要になるだろう。  天莉(あまり)と一緒にいる時には一切感じないニオイに対する嫌悪感に、早く色々始末を付けて、愛しい天莉を抱きしめたいと思ってしまった(じん)だ。  半月近く天莉を休ませているのは、もちろん心身ともに傷ついた天莉を休息させてやりたい気持ちもあったけれど、何よりもこの悪意の塊みたいな女に、天莉を会わせたくなかったのだ。  直樹の調べで、紗英が天莉から奪い取った横野(よこの)博視(ひろし)と別れたがっていたことや、妊娠が虚偽なことは割と早くから分かっていた。  バカなくせにずる賢い眼前の女が、()もしない胎内(はら)の子を始末すると言う名目で何らかのアクションを起こすことは想定の範囲内だったのだが、思いのほかその動きが鈍くてヤキモキさせられたのを思い出す。  江根見(えねみ)則夫(のりお)にとっては、娘の妊娠が嘘だったのは想定外だったらしいが、そこへ更なる追い打ちを掛ければ、娘を切り捨てようとしている則夫にとっても痛手になるだろう。 --------------------- 【お知らせ】 エッセイ583頁(https://estar.jp/novels/26049096/viewer?page=583)に、私がアイコンにしている(じん)と直樹の挿し絵のメイキングへのリンクを貼っています。 雪ちゃんよラフや下絵が見られますので是非❤️ ※雪ちゃんの『雑記帳』77頁、メイキング記事への直リンクはこちら(https://estar.jp/novels/25762980/viewer?page=77)です。
/482ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6544人が本棚に入れています
本棚に追加