(24)尽の正体

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 株式会社ミライの親会社であるアスマモル薬品の現社長の名は田母神(たもがみ)(ひらく)。  株式会社ミライを起業した創設者でもある。 「桃坂(ももさか)先生、今日はわざわざこちらまでご足労頂き、有難うございます」 「問題ありませんよ、。これも仕事のうちですからね」  (じん)は則夫から視線を外して席を立つと、父親と同年代の桃坂へ自分のすぐそば――右手側上座の席を勧めた。  尽から〝桃坂先生〟と呼ばれた男は、まるで尽を昔から知っている近所の子供くらいのフレンドリーな対応で接して来て。  尽はそのことにちょっとだけ苦笑する。  桃坂はフルネームを桃坂(ももさか)正二郎(しょうじろう)と言って、アスマモル薬品の顧問弁護士をしている人物だ。  今日は理由(わけ)あって、ミライの方へ出向してもらっているが、本来ならばこちらにはこちらで専属の弁護士がついている。  その弁護士を呼ばずに、桃坂にここまで足労してもらったのは、もちろん今回の件がアスマモル薬品の利権に関わることだからだ。 「君たち二人がアスマモル薬品を出てから随分になりますが、やっと例の件が解決しそうで、僕も田母神くんもようやく肩の荷が下ろせそうです」  アスマモルの社長・田母神(たもがみ)(ひらく)とは旧知の仲だという桃坂は、(じん)と直樹を交互に見遣ると、雇い主である(ひらく)のことを親し気に「田母神くん」と呼んだ。 「問題をさっさと解決して……尽ちゃんとナオちゃんが一日でも早くあちらへ戻れるよう、僕も力を尽くさないといけませんね」  ニコニコ笑いながら、桃坂は自分の登場で押し黙ってしまった江根見(えねみ)則夫(のりお)風見(かざみ)斗利彦(とりひこ)の前に、いくつかの書類を並べていく。
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