(24)尽の正体

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「皆、刑事処罰は(まぬが)れないだろうね」  基本的に天莉(あまり)は優しい。  というか優しすぎて危ういところさえあるくらいだ。  (じん)の言葉に案の定、「そっか……」と少し悲しそうに眉根を寄せるから。 「自分のせいで、なんて思わないことだ」  尽はそう付け加えずにはいられなかった。 「……」  尽の言葉を天莉が否定しないことからも、彼女が今回の騒動に関して少なからず負い目を感じているのを痛感させられた尽だ。 「忘れてはいけないよ、天莉。彼らの被害者はキミだけじゃない。そもそもアスマモル薬品も不利益を(こうむ)ってるし、天莉が今回の件に何ら巻き込まれていなかったとしても、いずれ皆そうなる運命だったんだ」  尽だって、正直天莉を巻き込みたくなんてなかった。  未遂(みすい)で済んだから良かったようなものの、もしもそうでなかったら。  尽は自分を許せなかったはずだ。  尽が天莉を見初(みそ)めなければ、彼女に(るい)が及ぶことはなかったとさえ思えるから。  尽は天莉を(いさ)めながら、自分も自然眉間(みけん)にしわを寄せてしまうのを止められなかった。 「尽くん?」  天莉は自分の痛みには鈍感なくせに、尽のそれには驚くほど敏感だ。 「……尽くんこそ自分を責めてるんじゃない? 私、大丈夫だから。――ね?」  食事をする手を止めると、天莉の手が茶碗を手にしたまま食卓へ置かれた尽の手に触れた。 「尽くんのお父様からもめちゃくちゃ謝られちゃったけど……私、尽くんと婚約出来た(こうなれた)こと、微塵(みじん)も後悔してないから」  そこでふと、少し困ったように眉根を寄せて「き、気後(きおく)れはしてるけど」と声のトーンを落とした。  そんな天莉に、尽は「それは聞き捨てならないな?」とつぶやいて。  スッと箸を置いて天莉の手をギュッと握ると、「でも、今更離してあげられないから……(あきら)めて?」と天莉を真正面からじっと見つめる。  天莉は真剣な尽の様子に息を呑んで。 「本当に……私でいいの?」  ややして、不安そうにそう問いかけてきた。  その質問に、尽がすぐさま「他の誰でもない。俺は天莉じゃなきゃダメなんだよ?」と答えたのは言うまでもない。
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