(24)尽の正体

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***  病院では入院するわけではないのにホテルの一室かと思えるような個室に通されてしまった天莉(あまり)だ。  とても肌触りの良い検査着に着替えさせられ、心地よいスプリングのきいた豪奢(ごうしゃ)なベッドに寝かされた天莉は、オロオロとした表情で(じん)を見上げた。 「あ、あのっ、……尽くん……?」  別にどこもしんどいところはない。  なのに何故寝そべらなければならないんだろう。  そんな、天莉の戸惑いに揺れる瞳に、 「結構沢山検査項目があるからね。疲れてしまわないよう横になれる部屋を確保してもらったんだ」  尽が至極当然と言った調子で返すから。  天莉はソワソワと落ち着かない。 「い、椅子があって座れるなら別にそんな……。私、もう全然しんどくないし……平気だよ?」  で、薬の副作用はすっかり抜けている。  一晩中、尽に散々愛されて高められた身体は気怠(けだる)さを覚えないのか?と問われればそんなことはないし、声だって少し(かす)れてしまっているのを自覚している。  だけど自分の意志でしっかり動けるし、話すのにだって不自由はない。  なのに――。 (こ、これはどう考えても過保護過ぎだよ、尽くんっ)  個室を占拠するのは別料金がかかってしまいそうで、小市民の天莉には贅沢に思えて居心地が悪い。 「天莉、キミの顔を見ていたら何を言いたいのかは大体想像がつくけれど……この待遇も含めてアスマモルからの慰謝料の一部だと思ってくれたらいいから」  言われて、天莉はハッとした。
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