(24)尽の正体

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 確かに天莉(あまり)が盛られた薬の件は、アスマモル薬品にとっては醜聞(しゅうぶん)に当たるだろう。  それを盛られた天莉が、未認可の薬の服用で身体に異常が残っていないか検査を受けるのだ。  そのこと自体を外部へ漏らさないためにこんな配慮がなされているのだとしたら……個室に通されたのにも納得がいって。  自分が大人しくここにいてスタッフの皆さんの言うことを聞くのはきっと、アスマモル薬品の評価を貶めないためにも必要な措置なのだ。 「分かった……」  天莉がそう答えて、「でも……寝そべっているのは何だか落ち着かないから……座っておくね?」と身体を起こしたのと同時、コンコンと扉がノックされた。  その音に、(じん)が天莉の方をうかがうように見つめてくるから、検査着の体裁(ていさい)を整えてコクッとうなずいたら、尽が「どうぞ」と返した。  天莉は、てっきり病院のスタッフが入ってくるのだと思っていたのだけれど――。 「初めまして、玉木(たまき)天莉(あまり)さん」  よく通る低音イケボとともに入ってきたのはスーツ姿の壮年の男性で。想定外のダンディな異性の登場に、天莉はどうしたら良いのか分からず戸惑ってしまう。  年は六〇に行くか行かないかくらいだろうか。自分の父親より少し年上かな?と思ったのにも関わらず、男性的な魅力と、そこはかとない既視感に心がザワザワと落ち着かないのは何故だろう。 「あ、あの……」
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