(24)尽の正体

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 せめて検査着に着替える前だったなら、もう少しまともな応対が出来たかも知れないけれど、着替える際、下着(ブラ)も取るように言われていたから。  そのことを意識した天莉(あまり)は、慌てて胸の前で手をクロスさせて眼前の男を見上げた。 「……、検査が終わるまで待てなかったんですか?」  (じん)が、クローゼットから天莉の上着を取って来て羽織らせてくれたことに、心底ホッとした天莉だ。  それと同時、尽の言葉を頭の中で反芻(はんすう)して。 「えっ? 尽くんの……っ!?」  その言葉の意味を飲み込むなり慌ててビシッと背筋を伸ばしたら、 「ああ、そんなに(かしこ)まらないで?」  恐縮する余り狼狽(うろた)える天莉を片手を上げて制しながら、眼前の男がクスッと笑った。その表情が、尽にとても似ていることに今更のように気付かされた天莉だ。 (あ。尽くんに似てたから私……)  尽の父親を一目見た瞬間、かっこいいと思ってしまって落ち着かなかったのだ。 「尽の父です」  言って手を差しだされた天莉は、慌ててその手を握り返そうとして。 「必要ない」  尽にスッと(さえぎ)られてしまう。 「直樹が言っていた通りの溺愛ぶりだね、尽」  ククッと笑いながら手を引っ込めた尽の父親が、代わりに名刺を差し出してきたから、天莉は今度こそいそいそとそれを受け取った。  小さな紙片に書かれた内容へ天莉が視線を落とすより先に「アスマモル薬品工業株式会社の代表取締役社長をしております、田母神(たもがみ)(ひらく)と申します」と名乗られて。  天莉は「えっ」と驚きの声を上げた。
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