(24)尽の正体

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 妻を亡くしてからミライの社長に就任するまでの十数年間、雄太郎(ゆうたろう)(ひらく)の右腕として(つか)えていたのは(じん)の記憶にも、直樹の記憶にもしっかりと刻まれている。  直樹は、兄弟同然に一緒に育った幼なじみの尽のことを、父と(ひらく)の関係みたいに補佐したいとずっと考えていたらしい。  アスマモル薬品で尽とともに働いていた直樹が、ミライへの出向にも付き従うと申し出たのは半ば必然で。  (ひらく)も雄太郎も、そんな二人の意志を最大限に尊重する形でミライでの(ポスト)を用意してくれた。 ***  そんな話を病院の一室で(じん)から淡々と聞かされた天莉(あまり)は、情報量の多さにただただ驚くばかりで何も言えなくて。 「玉木(たまき)天莉(あまり)さん。わたくしの管理が行き届かないばかりに、辛い目に遭わせてしまって本当に申し訳ありませんでした」  尽が一通り話し終えるなり、全責任は自分にあると丁寧に頭を下げてきた田母神(たもがみ)(ひらく)に、天莉はただただ慌ててしまう。  そればかりか、隣に立つ尽まで父親に(なら)って同じようにするから。 「あ、あのっ、私……ホントにもう大丈夫なのでっ。お顔を上げて下さい」  天莉はベッドから立ち上がると、オロオロしながら二人に寄り添った。 「……天莉、スリッパも履かずに」  そんな天莉をすぐさまベッドへ座らせて、尽がポケットから取り出したハンカチで足の裏を拭う。
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