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妻を亡くしてからミライの社長に就任するまでの十数年間、雄太郎が啓の右腕として仕えていたのは尽の記憶にも、直樹の記憶にもしっかりと刻まれている。
直樹は、兄弟同然に一緒に育った幼なじみの尽のことを、父と啓の関係みたいに補佐したいとずっと考えていたらしい。
アスマモル薬品で尽とともに働いていた直樹が、ミライへの出向にも付き従うと申し出たのは半ば必然で。
啓も雄太郎も、そんな二人の意志を最大限に尊重する形でミライでの席を用意してくれた。
***
そんな話を病院の一室で尽から淡々と聞かされた天莉は、情報量の多さにただただ驚くばかりで何も言えなくて。
「玉木天莉さん。わたくしの管理が行き届かないばかりに、辛い目に遭わせてしまって本当に申し訳ありませんでした」
尽が一通り話し終えるなり、全責任は自分にあると丁寧に頭を下げてきた田母神啓に、天莉はただただ慌ててしまう。
そればかりか、隣に立つ尽まで父親に倣って同じようにするから。
「あ、あのっ、私……ホントにもう大丈夫なのでっ。お顔を上げて下さい」
天莉はベッドから立ち上がると、オロオロしながら二人に寄り添った。
「……天莉、スリッパも履かずに」
そんな天莉をすぐさまベッドへ座らせて、尽がポケットから取り出したハンカチで足の裏を拭う。
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