(24)尽の正体

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「あ、あのっ、(じん)くんっ、そんな……ハンカチが汚れちゃうっ」  いきなりの下僕ぶりにソワソワさせられまくりの天莉(あまり)と、甲斐甲斐しくフィアンセの世話を焼く(むすこ)を黙って見詰めていた(ひらく)が、ほうっと吐息を落とすのが聞こえて。  天莉は恥ずかしさに懸命に足を引っ込めようとしたのだけれど、尽の手がしっかり足首を(とら)えていて叶わない。 「じ、尽くん! お父様が見ていらっしゃるからっ!」  泣きそうな声でそう告げるなり、(ひらく)がふわりと天莉に微笑みかけた。 「天莉さん。情けない話ですが、わたくしも妻も、この子が本当の意味で幸せな結婚するのを諦めておりました。親のわたくしが言うのも何ですが……この容姿です。モテるくせに遊ぶばかりで……本気の相手を作ったところを見たことがありませんでしたので」  (ひらく)の言葉に、尽が「父さん、天莉に要らないことを吹き込まないで頂けますか?」と牽制(けんせい)したのだけれど。  (ひらく)はそんな尽をちらりと見遣るとふっと顔をほころばせて、「手のかかる子ですが、尽のこと、よろしくお願いします。――わたくしも妻も、天莉さんが家族になってくれること、心待ちにしておりますので」と天莉の手を握った。 「はい……」  天莉が答えるより先に、尽がその手を振りほどかせたのは言うまでもない。
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