6551人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなこんなで住む場所――というか退路を断たれてしまった天莉には、尽と同棲を続ける道しか残されていないのだけれど。
今回の、親会社への移籍の件に関しても「ハイかイエスかうんで答えてね?」みたいな感じで、元より天莉には「NO」と答える未来は残されていなかったように思う。
「尽くんの策士……」
ポツンと拗ねたようにつぶやいたら「今更分かったの?」とクスクス笑われた。
***
リビングで話していたら、オレオが尽の気を惹こうと必死の形相でニャーニャー鳴きながら二人の間に割り込もうとしてくるから。
しゃがみ込んでそんなオレオを撫でながら尽が苦笑まじり、「のんびり話せる場所に移動しようか?」と問い掛けてきた。
天莉が(うちにそんな場所あったかな?)とか(オレオを部屋から締め出しちゃうのかな?)とか思っていたら、あれよあれよと言ううちに服を脱がされて。
「あ、あのっ」
余りの手際の良さに戸惑う天莉をよそに「風呂へ行こう」と下着姿のまま手を引かれて洗面所に連れ込まれてしまう。
「お湯はいつもより温めのが溜めてあるからね」
必死に駆けてきて脱衣所にまで転がり込んできたオレオを「ホント困った子だ」と抱き上げた尽から、吐息まじりに言われて。
尽が裸同然の自分を置いて姿を消したことに安堵した天莉が、わけも分からないまま言われた通り裸になってシャワーを浴びていたら、自身も全裸になった尽が当然のように入って来て、背後から包み込むように抱き締められた。
「あ、あの……尽くん……オレオは……」
てっきり天莉が風呂に入っている間、尽はオレオの相手に忙殺されるのだとばかり思っていたのに。
「リビングに閉じ込めてきたよ?」
さらりと言われて鏡越し、じっと見詰められてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!