(5)俺も今夜はお前ん家に

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(クソッ!)  そのを自分から遠ざけるためにも!  目の前のだというのに。  何というジレンマだろうか。  それでも諦めきれない(じん)が、「なぁ直樹(なお)。だったらあれだ。俺も今夜はお前ん()に――」と提案してみたのだけれど。 「馬鹿が。これ以上愛する璃杜(りと)の負担を増やすような真似、僕がすると思うか?」  そう一蹴(いっしゅう)されて、そのついで。 「それにお前ん()と違って、うちは部屋数が限られてるからな。残念ながら客人を二組も泊められるような空き部屋はないんだ。――(いさぎよ)く諦めろ」  物理的な追い討ちまで掛けられてしまった。  取り付く島もないとはまさにこのことだと思った尽だ。  だが、尽にだって尽なりの大義名分がある。  そう簡単に引き下がれないのもまた事実なのだ。  何しろ尽はまだ、天莉(あまり)と結婚の話を詰められていないのだから。  中途半端に(めと)りたいと告げたままになっているのは非常にまずいではないか。  予定では家へ連れ帰ってからじっくり懐柔するはずだったのに――。 (何か色々と大誤算だ)  まさか直樹が天莉を自分の家へ連れ帰ると言い出すだなんて思わなかった尽だ。  自宅へ戻ればこういう日のために備えてあった婚姻届もあって、天莉を捕らえる準備は万端だったのだが、この際それは後でも構うまい。 (とりあえず玉木さんともう少し話す時間を作ることが先決だ)  そう思った。 *** 「なぁ直樹(なお)璃杜(りと)の負担にはならんと約束するし、食事だって俺のは自分で用意する。何なら玉木さんの飯も俺が用意したっていい。――あと……部屋の問題はあれだ。俺はと一緒でも構わないから」  何の気なし。  直樹と璃杜(りと)の娘の名を出した途端、直樹に「お前のような野獣をふわりと一緒に寝かせられるか!」と却下されてしまう。 「いや、ちょっと待て。三歳児に手は出さんぞ?」  売り言葉に買い言葉。そんなに考えもせずそう言って、ハッとしたように天莉を見た尽だ。  今の言い方だと、まるで女遊びが男の(たしな)みのひとつみたいに思われてしまいそうではないか。  だが、幸いと言うべきか。  天莉はそれよりも〝ふわり〟に心を(とら)われたらしい。 ―― スター特典追加しました。 https://estar.jp/extra_novels/26084491 006e0e54-6454-4df0-8262-aa96f8187ecc
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