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(クソッ!)
その彼らを自分から遠ざけるためにも!
目の前の彼女の協力が必要不可欠だというのに。
何というジレンマだろうか。
それでも諦めきれない尽が、「なぁ直樹。だったらあれだ。俺も今夜はお前ん家に――」と提案してみたのだけれど。
「馬鹿が。これ以上愛する璃杜の負担を増やすような真似、僕がすると思うか?」
そう一蹴されて、そのついで。
「それにお前ん家と違って、うちは部屋数が限られてるからな。残念ながら客人を二組も泊められるような空き部屋はないんだ。――潔く諦めろ」
物理的な追い討ちまで掛けられてしまった。
取り付く島もないとはまさにこのことだと思った尽だ。
だが、尽にだって尽なりの大義名分がある。
そう簡単に引き下がれないのもまた事実なのだ。
何しろ尽はまだ、天莉と結婚の話を詰められていないのだから。
中途半端に娶りたいと告げたままになっているのは非常にまずいではないか。
予定では家へ連れ帰ってからじっくり懐柔するはずだったのに――。
(何か色々と大誤算だ)
まさか直樹が天莉を自分の家へ連れ帰ると言い出すだなんて思わなかった尽だ。
自宅へ戻ればこういう日のために備えてあった婚姻届もあって、天莉を捕らえる準備は万端だったのだが、この際それは後でも構うまい。
(とりあえず玉木さんともう少し話す時間を作ることが先決だ)
そう思った。
***
「なぁ直樹。璃杜の負担にはならんと約束するし、食事だって俺のは自分で用意する。何なら玉木さんの飯も俺が用意したっていい。――あと……部屋の問題はあれだ。俺はふわりと一緒でも構わないから」
何の気なし。
直樹と璃杜の娘の名を出した途端、直樹に「お前のような野獣をふわりと一緒に寝かせられるか!」と却下されてしまう。
「いや、ちょっと待て。いくら俺でも三歳児に手は出さんぞ?」
売り言葉に買い言葉。そんなに考えもせずそう言って、ハッとしたように天莉を見た尽だ。
今の言い方だと、まるで女遊びが男の嗜みのひとつみたいに思われてしまいそうではないか。
だが、幸いと言うべきか。
天莉はそれよりも〝ふわり〟に心を捉われたらしい。
――
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