(7)俺は根菜の味噌汁が好きなんだ

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 利害の一致があるからキミを選んだんだと言ってくれている今現在の(じん)は、ある意味天莉(あまり)のことが好きだと愛をささやく男より信頼出来るかも知れない。  ビジネスライクに自分へ結婚を迫ってくれる目の前の美丈夫は、きっと天莉に利用価値がある間は裏切ったりしないだろう。  でも――。  裏を返せば、もっと好条件の相手が出てきたらそちらへ乗り換える可能性も十二分(じゅうにぶん)にあるわけだ。  その時、もし自分が尽のことを本気で愛してしまっていたとしたら……。 (また同じような思いをするのはイヤ!)  失恋直後で傷心の身。恋愛に対してすっかり憶病になってしまっている天莉が尽の腕の中。  傷付きたくないという打算から防戦一方。一宿(いっしゅく)一飯(いっぱん)の恩義を返しますと(ほの)めかしたら、尽の表情がわずかに曇った。 「その提案は受け入れられないな」  ややして真剣な顔をして天莉を見下ろしたまま尽がそんなことを言うから。  天莉は心の中を見透かされたのかと思ってドキッとした。  でも――。
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