(8)まさか今、猫缶とか持ってたり?

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天莉(あまり)、男に裏切られたばかりのキミに、俺のことを信じろというのは酷なことだと思う。けど……俺は――。俺の方は天莉が思っている以上にキミのことを愛しく思っているということだけは覚えておいて欲しい」  さっき、ベランダで声に出して問えなかった『貴方は私を愛してくれるんですか?』の答えを期せずしてもらえた気がして……。  天莉は、大きく瞳を見開いた。 「でも私たち、今日初めて……」  まともに話したばかりではありませんか――。  そう続けようとして、(じん)が自分のことを先んじて色々調査済みだったことを思い出した天莉は、思わず口をつぐんだ。  目の前の美丈夫は、自分のことを一体いつから見ていたんだろう?  好きだと言ってくれるなら、そうなった発端は?  それを聞くことが出来たなら、少しは彼のことを信じられる気がして。 「あ、あの――」  天莉の腰を抱いたまま歩き始めた尽に、半ば無意識。  気が付けば、「私を好きだと思ってくださったきっかけをお聞きしても?」と問いかけていた。 ***  まさか天莉(あまり)の方からそんな質問を投げかけられるだなんて思っていなかった(じん)は、足を止めてすぐそばの天莉を見下ろした。  明確な転機があったとすれば、それは彼女が最低男にフラれた姿を見たからだ。  あの時の、凛とした天莉の表情が忘れられない。  だが、そんなつい先日ついたばかりの傷口を(えぐ)りかねないエピソードを話して、天莉は無傷でいられるだろうか。 (……彼女が傷付く姿は見たくないな)  何度か強引に抱き上げた天莉の、少し力を加えれば折れてしまいそうに華奢な身体つきを思い出した尽は、我知らずそんなことを思ってしまった。  彼女を手中に収めてすぐの頃は天莉の弱みにつけ込んで、自分の計画に巻き込めればいいと手前勝手に思っていたはずだ。  なのに、今はどうだろう。
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