(8)まさか今、猫缶とか持ってたり?

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 もちろん、玉木(たまき)天莉(あまり)という女性が、自分にとって都合の良い(こま)になってくれるであろう存在なことに変わりはない。  でも、執務室へ彼女を連れ込んですぐの頃みたく、天莉の意志を全て無視してぞんざいに扱えるかと聞かれたら、喉の奥に苦いものがこみ上げてくるのだ。  元々天莉の見た目は結構好みだったし、真面目で真っすぐな彼女の性格は、素質だとも思っていた。  だからこそ自分は天莉をターゲットに定めたのだ。  そう。最初は確かにそれだけだったはずなのに――。 (俺は彼女に情でも芽生えてしまったんだろうか)  しばらく一緒にいて、間近で天莉のことを見れば見るほど……。  データ上だけでは見えてこなかった〝玉木(たまき)天莉(あまり)〟という女性の人となりに触れる機会が増えた。  一緒にいることで〝自分にとって都合の良い女〟と言うだけの価値しか持たなかった天莉が、それこそ直樹や璃杜(りと)のように、〝血の通った一人の人間〟に見えてきたから。  さっき期せずして本人に告げた、『天莉が思っている以上にキミのことを愛しく思っている』なんて言葉も、自分のなかの天莉への認識が変化した結果に思えた(じん)だ。  あれは、そう。  尽が普段自分に都合よく他者を動かすため使っているようなリップサービスなんかではなかったし、ましてや天莉を絡め取るために計略的に発した言葉ですらなかった。  天莉にちゃんと向き合いたい一心で、気が付いたら勝手に口を突いていたセリフ――。  それは、正直自分でも理解不能な言動だった。 ―― 『崖コク』、昨日夕方〜表紙絵が変わりました! それに伴いスタ特に 583228ca-cf85-4594-ab38-1eb04d5687c5 https://estar.jp/extra_novels/26100667 を上げました。 もし宜しければ❤️
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