(8)まさか今、猫缶とか持ってたり?

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*** 「ひゃひっ!?」  頬に優しく触れられながらの、眩暈(めまい)がしそうなくらいの甘い声音に、天莉(あまり)はビクッと肩を跳ねさせた。  目の前で天莉を見下ろしている高嶺(たかみね)(じん)と言う男。  数時間前までは、それこそ名前の通り『高嶺の(きみ)』で、接点なんて皆無だった。  そんな(じん)からの畳み掛けるような甘々モードに、天莉の心は完全にキャパオーバー。  もちろん、いくら真面目が服を着て歩いているような天莉だって、ハンサムな異性から手放しに褒められれば悪い気はしない。  しないのだけれど――。 「……あ、あのっ、高嶺常務。お願いなので少しペースダウンしてください。私、一気に色々ありすぎて……正直頭が付いていけていないのです……」  ()()うの(てい)でポツリポツリと……。  まるで自分自身確認するみたいに絞り出した言葉は、(まぎ)れもなく天莉の本音だった。 (どうしよう。何だか頭が痛くなってきた……)  ご飯を食べて大分良くなっていたはずなのに。  考えることがありすぎるからだろうか。  こめかみの辺りがズキズキと鈍く(うず)いた。
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