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「ひゃひっ!?」
頬に優しく触れられながらの、眩暈がしそうなくらいの甘い声音に、天莉はビクッと肩を跳ねさせた。
目の前で天莉を見下ろしている高嶺尽と言う男。
数時間前までは、それこそ名前の通り『高嶺の花』で、接点なんて皆無だった。
そんな尽からの畳み掛けるような甘々モードに、天莉の心は完全にキャパオーバー。
もちろん、いくら真面目が服を着て歩いているような天莉だって、ハンサムな異性から手放しに褒められれば悪い気はしない。
しないのだけれど――。
「……あ、あのっ、高嶺常務。お願いなので少しペースダウンしてください。私、一気に色々ありすぎて……正直頭が付いていけていないのです……」
這う這うの体でポツリポツリと……。
まるで自分自身確認するみたいに絞り出した言葉は、紛れもなく天莉の本音だった。
(どうしよう。何だか頭が痛くなってきた……)
ご飯を食べて大分良くなっていたはずなのに。
考えることがありすぎるからだろうか。
こめかみの辺りがズキズキと鈍く疼いた。
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