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その尽が、フッと頬を緩めて『自分の親はただの小金持ちだ』と、どこか意味深長に笑うのを見て、天莉は首を傾げずにはいられない。
彼のハイスペックな暮らしぶりや立ち居振る舞いを鑑みるに、天莉の思う小金持ちと、尽の言うそれの間には大きな隔たりがあるように思えたからだ。
天莉は今までそれほど興味がなくて調べたことなんてなかったけれど。
(高嶺常務のこと、ちゃんと色々知りたい。寝る前に検索してみようかな)
と、どこか霞のかかった頭でぽわんと思った。
それなのに――。
スマートフォンでWebブラウザを開き、検索窓に『たかみ』……まで打ち込んだところで、疲れのためか携帯を握りしめたまま寝落ちして。
そのまま熱を出して寝込んでしまった――。
***
半ば強引だったとは言え、世話になりっぱなしは性分に合わない。
ここにいさせてもらっている間は、せめて家事くらいは頑張ろうと思っていたのに、完全に出鼻をくじかれてしまった天莉だ。
朝方不快感にふと目を覚ました天莉は、喉の渇きに無意識。「水……」とつぶやいた声がやけにしゃがれていることに気が付いて。
何気なくベッドに身体を起こそうとして、全身に鉛を詰め込まれたみたいに身動き出来なくなっていることに驚いた。
頭も割れるように痛むし、何より関節が痛くて全身が悲鳴を上げている。
さすがにこれは熱が出てしまったんだ、と体感的に察した天莉だったけれど、だからと言ってどうしようもなくて。
布団の中でしんどさに耐えていたら、しっかり毛布まで被っているのにゾクゾクとした悪寒がし始めて、歯の根が合わなくなった。
胎児みたいに身体を縮こまらせてそれに耐えていたら、どんどん空が白んできて。
遮光カーテン越しにも夜が明けたと分かったのだけれど。
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【お知らせ】
スタ特に『「あーん」して?』
https://estar.jp/extra_novels/26101985
を追加しました。(本編に★1で解放されます)
尽が天莉を看病するお話です。
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