(6)囚われの天莉

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***  天莉(あまり)としては結構全力でジタバタしたつもりだったのに。  (じん)はそんなのモノともせずに平然とした様子で歩を進めると、玄関から真っすぐ行ったところにある七〇平米(へいべい)はあろうかというだだっ広いリビングルームへ天莉を運んだ。  リビングに入って真正面はバルコニーで、壁一面が窓になっているから。  日が昇ったらきっと、とても明るいんだろうなと思った天莉だ。  だけど今は夜で、窓の外はポツポツと民家の明かりが見えるものの、基本的には黒々として見える。  そんななか二人が部屋へ入るなり照明がパッと灯るから、まるで鏡みたいになった窓ガラスが尽に抱かれたままの天莉の姿を映し出した。  今まで自分が尽の腕の中にいるということは分かっていたはずの天莉だけれど、こんな風に客観視させられるとやたら恥ずかしくなって。 「あ、あの、常務、早く下ろしてください……」  蚊の鳴くようなか細い声で尽を見上げた。  この状態でさっきコンシェルジュの前を通過したんだと思うと、今更のように顔から火が出そうになる。 「天莉、耳まで真っ赤だよ。ひょっとして、窓ガラスに映ったのが恥ずかしかったのかな?」  きっと尽も同じ光景を目にしたのだ。  クスッと笑って天莉をふかふかのソファの上に降ろしてくれると、「アレックス、カーテンを閉めて」と誰へともなく言葉を発して。  一人暮らしだと言ってたはずなのに……もしや外国人執事様でもいらっしゃるのかしら!?と天莉がソワソワしたと同時、誰もいないのにゆっくりとカーテンが閉まり始めて驚いてしまう。
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