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太陽との出会い
頬をするりと冷気が通り抜けた。
ただ、このときは僕はあまり寒くはなかった。
今日もラッキー。彼女の横顔が見える。
どんなに太陽が登ってようが僕にとっても朝は彼女の笑顔を見ることだった。
だけど、この恋が敵わないことは人一倍僕が知っていた。
彼女の名前は……わからない。
学年も…中高一貫校だから年上化年下かすらわからない。
だけどそんなことで恋を諦めるような僕ではない。
彼女は癌だ。
癌、と言っても詳しくは知らない。
でも薄々察せてしまうのは、彼女が大きなニット帽を被っているからだ。
春、夏、秋とずっと被っているので趣味で被っているわけではなさそうなのだ。
彼女は人よりも明らかに色の悪い顔で明るく笑う。
上から落ちてきた雪を手でひろうと、とても嬉しそうににっこりと。
太陽なんかなくても君の笑顔は僕を温めてくれる。
また、明日彼女の笑顔を見に来よう。
僕はそう思うと、軽い足取りで校舎へ入っていった。
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