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独白2
やがて月日は移ろい、私が高校生になると祖父が癌で亡くなりました。
癌が見つかった時には既に手遅れだったので、本人には告げず、入院は嫌だと我儘を言う祖父の為に、母は家で祖父の介護をしました。
家に介護できる人間がいるのに、役所などへ相談するのは恥だからと、自分の病気を知らない祖父は最後まで母に介護をさせました。祖母はあんなに仲がよさそうに見えたのに、家で寝たきりになった祖父の元には行こうとせず、自分の部屋を私が小学生の頃に叔母と従兄弟が使っていた部屋に移しました。
母は祖父の介護と5人分の家事でやはりこまねずみのように働いていました。私も勿論、高校生になっていたので、祖父の食事を持って行ったり、祖母のお布団を敷いたりと少しは母の手伝いをしていました。
祖父は段々と弱っていきましたが、食事だけは口から食べたいと言うので、母は病人食と、普通の食事を作り分けていました。祖父に食事をあげるのには時間がかかったので、それは私がすることを申し出ました。
私がテスト期間の時も祖父の食事が遅いことには変わりありません。
私は進学校に入っていたので、試験勉強の時間が惜しくてたまりませんでした。
ほら、私って、自分の思い通りではないと気が済まないと先に言いましたよね。
だから、試験勉強中の休日のお昼に、少しだけ祖父の食事を急いだんです。スプーンに盛る量を少しだけ多めにして食事を早く終わってもらおうとしたんです。
スプーンに少し多めに乗せておかずを口に入れただけなのに、祖父は喉を詰まらせてしまいました。
咳込むでもなく本当に詰まった感じで顔を真っ赤にして苦しそうでした。声も出せませんでした。
私は特に咳き込んでいなかったので背中をさすったり軽くたたいたりもせず、見守っていました。
そのうち祖父が前のめりに倒れてしまったので体を起こしてあげて、背中をトントンとすると食べ物は胃に落ちて行ったようで、顔色は戻りましたが祖父は何も話もせず静かになっていました。
私は、このまま静かに寝かせた方がいいだろうと祖父を横たえて食事を台所に下げました。
母に、
「今日はあまり食べなかったのね。」
と聞かれたので
「食べている途中で眠くなったみたい。」
と、答え試験勉強のために部屋に戻りました。
夕食の時に私が祖父の部屋に行った時には祖父は息をしていませんでした。
急いで医者を呼びましたが、既に亡くなっているとの事。癌で闘病中だったし、大分弱っていたので、癌による死亡と死亡診断書には書かれました。
その後、祖母は
「私はもう、この家にはいたくないから。」
と、自分で老人介護施設を見つけて、年金ではとても賄えないような施設に勝手に入る手続きをし、一人息子である父も、その祖母のわがままを許したのです。
もしかしたら、祖母は私のしたことに気づいていたのかもしれません。
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